杉山正和(東京大学) |
太陽電池、蓄電池、燃料電池、さらにこれらを組み合わせたエネルギーシステムの要となるパワートランジスタなど、個々のデバイス・材料技術は近年特質すべき進化を遂げている。たとえば、太陽電池に関しては結晶シリコンで20%を超えるエネルギー変換効率、集光型では40%以上の効率が現実となっている。SiCやGaNを用いたエネルギー損失の少ないパワートランジスタも実用化されつつある。蓄電池は自動車用途にとどまらず再生可能エネルギーシステムの要として大きな注目を浴びている。また、太陽電池と組み合わせた水の電気分解・燃料電池により大容量の分散型蓄エネシステムを構築することも可能である。これらのデバイスの革新的な進歩は、それぞれの技術コミュニティーの中で進みがちであり、それらを組み合わせて実現できるシステムに関する展望が希薄になりがちである。一方、システムサイドは、現在入手可能なデバイスの性能に基づく保守的なシステム設計に陥りがちであり、デバイスの革新を促すような大胆な提案が求められる。このような状況を打破してエネルギーシステムに真のイノベーションをもたらすためには、化学工学の得意とするエレメントとシステムの密接なリンクが不可欠である。本セッションでは、上記革新的エネルギー技術の最先端に関する発表と、エネルギーシステムサイドからの発表を組み合わせて、化学工学会をエネルギーシステムイノベーションの舞台に仕立てるための仕掛けとする。