福島 康裕(東北大学) |
日々開発される膨大な要素技術のそれぞれが、どのような仕組みで何をどこまで提供できるのか、その知識の体系的な蓄積と理解がないと技術を使いこなす新たなシステムの設計はおぼつきません。一方で、要素技術ありきでこれをどう社会に実装するのか、という視点でおこなわれる技術開発では、社会のあり方を変えることで立ち向かってくる大きな課題を解決するような新結合(イノベーション)は起こせません。またもう一方で、要素技術を創出し、とことん磨く研究も変わらず必要です。これらの研究をどのようにバランスし、構成し、事業化へとつなげていくのかが大きな課題となってきています。また、社会をどう変えるのかというビジョン、そこに生まれるニーズ、これを満たすことが可能な技術と政策、制度、担い手を見いだし、開拓していくスキームも必要です。社会実装学研究会では、これらを、産学官民で共同してすすめていくためには新たな学問領域が必要と考えています。物質やエネルギーの流れを俯瞰してきた化学工学には、さらに技術や社会のニーズといったことまでもその俯瞰の射程に加え、このような学問領域の形成を主導していくことができるでしょうか。
本シンポジウムでは,「社会実装学(仮)」という,「社会を前進させるのに貢献する技術をシステム化し、実装するための新しい学問領域」を化学工学に加えるための議論を行います。本部企画と銘打っておりますが,一般講演を広く募集し,技術を社会に実装するためのヒントとなる事例の紹介,コンセプトの発表、経験の共有、レビューや考察を披露し、議論する場を設けます。ざっくばらんな意見交換の場として,みなさまの積極的なご参加をお待ち申し上げております。
シンポジウム番号・講演分類番号一覧
化学工学会 第51回秋季大会 (2020)